デコボコントローラ!

ナマケモノな未来の「自分」に打ち勝つための備忘録。

課題を見極めて生産性を高める『イシューからはじめよ』

些末な問題を取り上げる会議や願望まみれの会議に引っ張り出された上司が、苦笑いしながらそれとなく言う言葉。あるいは新入社員にメンターが勧める本。

たいていそれは『イシューからはじめよ』だ。

 

『イシューからはじめよ』は問題解決法を説く本の中でも実用的で、数多あるビジネス書の中でもとりわけ高い評価を受けている。

読みやすい文体だが、一読で本質を知り尽くすためには経験が必須だ。この先何らかの課題にぶち当たったとき、私は救いを求めて本書を手に取るかもしれない。

 

一読では済まない学びが、この本には詰まっている。何度でも読み返して咀嚼したい一冊だ。

犬の道に入ってはならない

大量の仕事を、時間(労働量)でむりやり解決することを「犬の道」と呼ぶ。

本書で一貫して見られるのが、「犬の道」には踏み込むなというメッセージだ。

労働量で解決する方法――特に残業は、問題解決能力の不足を目に見える形で触れ回るようなもので、たとえ「犬の道」でどうにか成長できたとしても、大量の業務を『時間』でしか解決できない作業員が生まれるだけだ。

作業員は、『時間』を投資する根性論でしか後輩にものを教えることができない。

「犬の道」を選べば、リーダーとしての成長の芽も摘んでしまう、と本書では語っている。

なぜ「犬の道」と呼ぶに至ったのかは分からないが、何にでも興味を示しては何かを拾ってくる犬のように、ちっちゃな問題を見つけては片っ端から解こうとする人になってはならない。そう伝えたかったのではないかと私は解釈している。

犬の道は、課題は「解く」前に「見極める」ことが大切だと、端的に示す言葉でもある。

「バリューのある仕事」とは何か

『どういう仕事をしたら会社から評価されるのだろう。』

仕事をしていれば、一瞬くらいそう考えることがあるかもしれない。

評価をされればもっと面白い仕事ができそうだし、何より給料が上がる。

「バリューのある仕事」は、経験が浅いほど漠然とした希望という形で目の前に現れ、業務に追われるにつれて忘れてしまう概念のようにも思われる。

確かなのは、バリューの本質が分からなくては、本当の意味で『バリューのある仕事』を見つけるのは不可能という点だ。

“無駄な努力”をしつづけても咎められない会社は珍しくない。「努力は報われる」と信じるデメリットは、『時間の浪費でしかない無意味な努力』の存在を認められないことだ。

本書では、『努力をすれば報われる』をばっさりと切り捨てており、生産性を「どれだけのインプット(投下した労力・時間)で、どれだけのアウトプット(成果)を生み出せたか」と定義している。

とはいえ、本書の趣旨は、小さな会社でささやかな成功を掴むような鶏口牛後の話ではない。

丁寧な仕事・質の高い仕事をするのはもちろん大切だが、それに丸1日も費やされたら、それはバリューのある仕事とは言えない。

作業を早くして生産性を高めるだけでも、バリューのある仕事とは言えない。

そもそも、それを作る必要性はあるのか?と問いかける必要があるのだ。

本当に今やるべきことにフォーカスを当てた課題設定をして、明確な解答を用意できている。本書では、これこそ「バリューのある仕事」だと本書では伝えている。

イシューの度合い」と「イシューに対する解答の質」。この2軸がバリューの本質だ。

まとめると、以下のようになる。(P.32,図6)

バリューのある仕事=イシュー度✕解の質

  • イシュー度 = 問題の質。この問題に答えを出す必要性の高さ
  • 解の質 = イシューに対して、どこまで明確に答えを出せているか

「小さな成功」からはじめる

本書の本質的な部分を一読で理解するのは難しい。

一度読んだ程度でイシューを見抜いて組織を変えることは、企業が抱える火急の問題を大量に解決してきた経験でもなければ不可能だろう。

せめて、普段から振り回されているささやかなタスクに取り組む際に、「それは、本当にイシューなのか?」という小さな疑問を投げかける癖をつけるのもいいかもしれない。

終わらない仕事を前に『悩む』のをやめて、『考える』にシフトすることから始める。

「一体何がイシューなのか?」を問いかけ、答えに詰まったら本書を読む。また考える。そうやって思考をどんどん深めていく。

問題解決を迫られたら、ぜひ本書を使い倒そうと思う。